この記事の対象者
- スマホ向けゲームで会話イベントのスクリプトを初めて作成する人
この記事で学べること
- 各タイトルの会話イベントで使用されている立ち絵の種類が分かる
- 初めて会話イベントのスクリプトを作成するとき、最初何をすればいいのか大体分かる
目次
なんでこんな記事を作ろうと思ったの?
仕事でノベルゲームやADVゲームの会話イベントのスクリプトを作成することがあります。
これまで複数のスマホ向けゲームでスクリプトを作成してきましたが、会話イベントの演出方法について具体的に学んだことがないことに、ふと気がつきます。
今後より良い会話イベントを作るために、会話イベントを作成するときのコツのようなものを調べ始めます。
……ない。
調べても全然参考になるような記事が出てこない!
ラーメン屋の秘伝のタレみたいに門外不出なものなの!?
え?
他のゲームを参考にすればいいじゃないかって?
違うんだ……!
私は参考書を読んだり、講座を受講するみたいに簡単に知識を手に入れたいんだ……!
というわけで自分で備忘録のようなものをまとめることにしました。(結局自分でまとめるのか……)
ただ自分用にまとめるだけなのもあれなので、スマホ向けゲームで会話イベントのスクリプトを初めて作成する人にも役に立ちそうな内容にまとめます。
ちなみに参考になるような記事が全くないわけではなく、ノベルゲーム向きではありますが、下記のようなものがありました。
いずれは私も演出関連の考察記事を投稿する予定ですが、今回は1回目の投稿なので、初めて会話イベントを作成する人向けの内容です。
- 各タイトルの会話イベントで使用されている立ち絵の種類
- 初めてスクリプトを作成するときにどういった手順で進めればいいか
上記2点について詳しく説明していきます。(演出関連は次回以降で)
会話イベントで使用される立ち絵の種類
会話イベントで使用される立ち絵には大きく分けて3種類あります。
- 2Dイラスト
- モーフィング/スケルタルアニメーション(2Dイラストが立体的にアニメーションする)
- 3DCG
各タイトルでどの種類の立ち絵が使用されているか確認してみましょう。
2Dイラスト




2Dイラストは最も一般的な立ち絵です。
同人ゲーム、商業ゲームを問わず幅広く使われています。
最近はモーフィングや3DCGの立ち絵を使ったタイトルのリリースが増えてきていますが、2Dイラストを使ったタイトルも依然として数多くリリースされています。
昨今のユーザーは動く立ち絵に慣れているため、商業ADVゲーム(特に美少女系)で立ち絵が表情差分+口パクだけだと「このゲームの立ち絵全然動かねえな……」とユーザーから言われることがあります。(マジかよ!)
……慣れって怖いですね(´・ω・`)
モーフィング/スケルタルアニメーション
Live2D


Spine

SpriteStudio

E-mote

2Dイラストが立体的にアニメーションする立ち絵は、2010年代からスマホ向けゲームでもよく見かけるようになりました。
原画のイメージや質感を保ちながら、立体的なアニメーションが行えるため、キャラの感情表現の幅を大きく広げることができます。
最近は以前に比べてだいぶ落ち着いてきていますが、Vtuberブームの影響もあり、一般のユーザーの間では「Live2D」が特に有名です。
「Live2D」は日本以外だと、中国、韓国などの日本のキャラクター文化になじみ深いアジアの地域でも有名です。
2Dイラストを動かすアニメーションツールは上記の他に「Anima2D」「Spriter」「AfterEffects」「AnimeEffects」などがありますが、会話イベントで使用しているタイトルを知らないので割愛します。(誰か知ってたら教えて!)
ちなみに会話イベントでイラストが立体的にアニメーションしていると、ほとんどのユーザーは使用されているアニメーションツールに関わらず、
「イラストがぬるぬる動いてる!Live2Dすげー!!」
と言います。
「Live2D」以外のアニメーションツールを開発してる人を思うと泣けてくる
( ;∀;)
ただまあそれは待機シーン、会話イベントなどに限った話であって、動画、バトルシーンなどでは「Spine」「SpriteStudio」も活躍しています。
というのも「Live2D」「E-mote」が繊細な表現を得意としているのに対し、「Spine」「SpriteStudio」はダイナミックな表現を得意としているからです。
複数のアニメーションツールを場面によって使い分けているタイトルもよく見かけます。それぞれのアニメーションツールには得意、不得意な分野があるってことですね。
各アニメーションツールの特徴について詳しく知りたい方は、下記のリンク先をご覧ください。
https://www.creativevillage.ne.jp/lp/game-anime/
3DCG




最近はスマホのスペックもだいぶ上がってきたので、3DCGのスマホ向けゲームが増えてきました。
それでも、3DCGを会話イベントで使用しているタイトルは、2Dイラスト、モーフィングを使用したタイトルと比べると少ないです。
ゲームのビジュアルに合っているかどうかという問題もありますが、そもそも3Dゲーム自体の開発が2Dゲームよりも難しいので、会話イベントのためだけに3DCGを使うようなタイトルは少ないです。
3DCGを会話イベントで使っているタイトルは、大抵インゲームでも3DCGが使われています。そのためMMORPGのようなジャンルだと、会話イベントでも3DCGが使用されていることが多いです。
立ち絵の種類についてのまとめ
ここ最近リリースされたタイトルで、みなさんが知ってそうなものを立ち絵の種類別にまとめてみました。(クソ面倒だった)
会話イベントのスクリプトの作成をするにあたって、各タイトルの立ち絵の種類を把握することはとても重要です。なぜなら、他タイトルの会話イベントを参考にするときは、みなさんが携わるタイトルの会話イベントの立ち絵の種類と一致していた方がいいからです。
会話イベントでは立ち絵の種類によって、キャラの表現力が大きく異なります。大きな違いだと、2Dイラストではキャラの表情差分だけだったものが、モーフィングでは動きのあるモーション、3DCGはさらにキャラの回転やカメラ制御が加わるからです。
2Dイラストの会話イベントに携わる方が、モーフィングや3DCGの会話イベントを参考にするのは構いません。ただ、キャラの表現を参考にする場合に逆のパターンはおすすめしません。
もちろん全く役に立たないわけではありませんが、参考にするのは同じ種類の立ち絵、同じ演出を実現することが可能な会話イベントからの方がいいです。
まずはみなさんが作成する会話イベントのスクリプトで、何ができるのかを把握していきましょう。
まず最初に何をするの?
すでにスクリプトを作成する環境、作成したスクリプトから会話イベントを確認する環境が整っている場合は、スクリプトで使用できるコマンドの機能を把握することから始めます。
コマンドというのは
- 喋る(台詞)
- BGM再生
- 背景表示
- フェードイン
みたいなやつです。
「コマンド……?なにそれ?おいしいの?」みたいな人は、下記の記事を読んでもらうと、スクリプト作成の流れのイメージが掴めると思います。
スクリプトで使用できるコマンドはコマンド一覧表みたいなものにまとめられているはずなので、各コマンドがどんな機能を持つのかざっと確認しておきましょう。
タイトルによってはたくさんのコマンドがあると思いますが、最初から全てのコマンドの機能と使い方を覚えきる必要はありません。(というか覚えきれねえ!)
「こんなコマンドがあるんだなあ」程度に目を通すだけでとりあえず大丈夫です。
開発が中盤から終盤、アプリリリース後のプロジェクトに途中から参加された方は、過去に先輩たちが作成された会話イベントのスクリプトがあると思います。
それらがある場合はスクリプトを確認しながら会話イベントを見てみましょう。
みなさんがこれから携わるタイトルの会話イベントがどういったものなのか、どんなふうにスクリプトを作成すれば、会話イベントで動作するのかが大体分かるはずです。
各コマンドが会話イベント上でどんな動作をするのか詳しく知りたい方は、コマンド確認用に作成されたサンプルスクリプトの会話イベントを確認してみましょう。
大抵の場合、実行するコマンドの名前を台詞に表示させながら、一つずつコマンドを実行しています。各コマンドの機能、使い方を覚えるにはもってこいなので、時間に余裕があれば一通りのコマンドを確認しておきましょう。
特に画面にエフェクトを出すような演出関連のコマンドは、実際に目で見て確認してみないと、どんな感じに動作するのか分からないことが多いです。
スクリプトを作成するにあたって、各コマンドの機能と使い方を覚えることはとても重要です。覚えないといつまで経ってもスクリプトを作成することができないので、出来るだけ早く覚えるようにしましょう。
ただ、先ほど説明した通り、一度に全てのコマンドの機能と使い方を覚えることは難しいです。
スクリプトを作成する際に使用する主要なコマンドは、過去に先輩たちが作成された会話イベントを確認すれば分かると思います。
その中で分からないコマンドが出てきたときは、コマンド一覧表とサンプルスクリプトで機能と使い方を確認するといったやり方が、初めての方には分かりやすいんじゃないかと思います。
え?過去に作成されたスクリプトも、サンプルスクリプトも、一つもない?
自分で作成するんだよおぉぉぉおお!!
開発が初期から中盤の段階ではサンプルとなるスクリプトが無いことがあります。無い場合はマニュアルに沿って、まずは練習がてらキャラが台詞を喋るだけのスクリプトを作成してみましょう。
無事キャラに台詞を喋らせることができたら、背景の切り替え、BGM・SEの再生、停止、トランジション(フェードイン/アウト)などのコマンドを順に試していきましょう。
このとき作成したスクリプトは今後コマンドの動作を再確認するときに使用するので、削除せずに保存しておきましょう。
また、会話イベントのスクリプトを作成する新たなメンバーが今後プロジェクトに参加する可能性もあります。
全てのスクリプトを一人で作成することが確定しているのであれば問題ありませんが、そうでない場合は他のメンバーのためにサンプルスクリプトを作成しておきましょう。
え?どうやってスクリプトを作成すればいいのかさっぱり分からない?作成はしたけど会話イベントを確認する方法が分からない?もしかしてマニュアルすら無い?
分かる先輩に聞け!
こっちに聞かれても困る!!
設定資料について
無事スクリプトの作成方法と会話イベントの確認方法を覚えることができたら、シナリオの脚本を元にスクリプトを作成する……前に、これから携わるタイトルの世界設定やキャラの設定資料などがないか確認しておきましょう。
設定資料がある場合はそれらの資料に必ず目を通してください。
設定資料を無視してスクリプトを作成すると、会話イベントを見たときに違和感や齟齬が生じる原因となります。
開発するタイトル(シナリオ)によっては世界設定とキャラの設定資料が数ページ程度にまとめられた簡易的なものもあれば、設定背景、世界設定、キャラ設定、シナリオ設定など各設定資料が事細やかにまとめれたものもあります。
会話イベントのスクリプトを作成する際には、これらの設定資料を確認しながら作業を進めていくことになります。
特にキャラやシナリオ設定の資料はスクリプト作成に大きく関わるため、入念に確認する必要があります。
シナリオに登場する各キャラには設定があり、そのキャラの性格、容姿、過去、価値観、行動理念などがキャラ設定の資料にまとめられています。
これらは各キャラを表現する際に必ず把握していなければいけない情報です。
また、シナリオ設定の資料には今後実装されるシナリオの他に過去に実装されたシナリオの内容がまとめられています。
プロジェクト終盤のタイトルやリリース後のタイトルに携わる場合、シナリオの途中から会話イベントのスクリプト作成を担当することがあります。
一度に全てのシナリオを把握する必要はありませんが、スクリプト作成を行うシナリオ以前の内容は把握しておいたがいいです。
なおシナリオ設定の資料がない場合は、脚本や会話イベントから過去のシナリオの確認を行います。
仮にシナリオ設定の資料があったとしても、直前の脚本や会話イベントぐらいは確認しておいた方がいいです。
シナリオ設定の資料から大まかな内容を把握することはできますが、キャラ同士の細かいやりとりまでは載っていません。
実際に会話イベントを確認しなければ分からない部分もあるので、そのあたりについても確認するようにしておきましょう。
タイトルによっては他社IPを使ってゲームを開発することがあります。(というか他社IPでゲーム開発はよくある)
その場合は原作がそのまま設定資料となることがあります。(原作の設定資料寄越せ!)
また、他のIPとコラボすることがスマホ向けゲームではよくあります。
コラボを行うとコラボ先の世界やキャラたちが登場する会話イベントを実装することもあります。
他社IPを使ったゲーム開発、他のIPとのコラボでは、小説、ゲーム、アニメなどの原作があるはずなので、仕事の休憩時間中か帰宅後に原作を確認しましょう。
家でも仕事ができるぞ、やったなおい!
え?原作を持ってない?
買え!!
追記:原作は会社にあるはずなので、会社のやつを借りましょう。会社の備品だから家には持って帰るな。
スクリプト作成のルールについて
世界設定やキャラの設定資料の確認が終わったら、スクリプト作成に関するルールも忘れずに確認しておきましょう。
まだスクリプトを作成できないのかと思ったあなた……これが最後なのでもう少しだけがんばろう!
各タイトルには会話イベントのスクリプトを作成するときに守らなければならないルールが大抵あります。
分かりやすいものだと、スクリプトの開始では「背景表示」「BGM再生」「フェードイン」のコマンド、終了では「BGM停止」「フェードアウト」のコマンドを入力するといったものです。
上記はテンプレートの一つです。
また、タイトルによっては不具合が発生する原因となるコマンドや引数の組み合わせなどがあります。
本来はそういった不具合が発生しないよう、原因となるものは入力できないようにするべきなのですが、なんらかの事情でそのような入力を受け付けている場合があります。
その他にもタイトル独自のルールが決まっていることがよくあります。
そのようなルールはどこかにまとめられているはずなので、必ず確認するようにしてください。
え?スクリプトを作成するときのルールが何も決まっていない?あなた一人しかスクリプトを作成しない?
お前がルールだ!
好きに作れ!!
スクリプト作成のルールから少し話がそれますが、スクリプトで表現できる自由度が高いタイトルの場合、どの程度の品質を目指すか事前に決めておかないと、作業者によって異なる品質の会話イベントが出来上がります。
ある程度品質が上下するのは仕方ありませんが、どの程度のものを目指すのか作業者同士で事前に打ち合わせておいた方がいいです。
品質の均一化を図るのであれば、スクリプト作成者の誰かに作成したスクリプトを確認してもらいましょう。
また、複数人で会話イベントのスクリプトを作成していると、作業者ごとのクセがスクリプトに反映されることがあります。
特にキャラの動きに関わるモーションは同じキャラ、同じ台詞でも、作業者によって異なるモーションを設定することがあります。
同じキャラ、同じような場面でモーションがばらついていると、同じキャラなのに違った印象を受けるため、そのちぐはぐが違和感へと繋がります。
モーションのばらつきに違和感を覚えるようなことがあれば、修正するようにしましょう。
あとがき
いかがでしたでしょうか。
今回はスマホ向けの商業ノベルゲームやADVゲームで初めて会話イベントのスクリプトを作成する人が、最初に何をすればいいのかまとめてみました。
私自身まだ会話イベントのスクリプトを作成した経験がそれほど長くないため、詳しく説明ができてない部分があると思いますが、おおまかな流れはどのスマホ向けタイトルでも変わらないはずです。(たぶん)
次回は各タイトルの会話イベントを動画で確認しながら、キャラの表情、ポーズについて考察する予定です。
今回の記事で興味を持っていただいた方は、よければ次回の記事も見にきてください。いつか投稿します。
それでは次回の記事で。
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